Vol.9 NOT A HOTEL AOSHIMAをつくる人

住む人の生活を、さりげなく後押しすること

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今回ご紹介するのは、NOT A HOTEL AOSHIMAを手がける「GENERAL DESIGN」の大堀伸氏へのインタビュー。NOT A HOTELオンラインサイトでの公開と同時にお届けいたします。

大堀伸氏によって、建築や空間そのものと共にデザインされる豊かな時間。自然光を存分に取り入れた開放感溢れる空間ならではの時間の過ごし方を、各部屋の細部に宿るこだわりとあわせて是非ご覧ください。


大堀 伸(GENERAL DESIGN)

NOT A HOTEL AOSHIMAを手がけた建築事務所「GENERAL DESIGN」の大堀伸は、控えめな建築家だ。ウェブサイトには住宅からホテル、商業施設まで、これまでに手がけたさまざまな建築が並ぶが、その設計意図を言葉で説明することはせず、写真のみが並ぶ。どんな仕事でも自分の作家性を主張することはなく、他者とのコミュニケーションと化学反応を大事にしながらクライアントと並走していく。

「こだわりはないんですよ」。軽やかにそう口にしながらも、その物静かな建築家がつくる空間には確固たる美意識がある。そんな彼が建築をつくる際に大事にするのは、細部よりも「豊かな時間を過ごせるかどうか」というより大きな概念だという。

「僕って、アパレルのお店やレストラン、住宅やホテルなどいろいろやってきていますけど、結局すべてに共通してやってるのは、いかに人がそこにいて居心地がいいのか、豊かな時間を過ごせるかということだけなんですよね。だから『ここはでこういうことをやりましょう』みたいなことは主張せずに、たくさんの居場所がある空間をつくることで、そこで過ごす人のことをさりげなく後押したり、そこでの時間をより楽しめるようなことくらいしかデザインしていないんです」

豊かな時間をデザインするのは、その空間で人がどんなふうに過ごすかを想像することから始まる。「自分だったらここで何したいかなって、やっぱり思うじゃないですか」。NOT A HOTEL AOSHIMAではそんなイメージを膨らませながら、大きなテラスとプールで家族や友人をもてなすことのできる「青島の家」、いい波が来たらすぐに海まで飛んでいける「波待ちの家」、海を一望できるプライベートな庭を持つ「海と庭の家」、喧騒から離れて広がる海の景色夕暮れを楽しめる「水平線の家」の4つの家のコンセプトが出来上がった。もともとの計画ではすべて平屋だった建物に2階の部屋をつくったのは、「2階からの眺めが見えたほうが『豊か』ですよ」という大堀の提案があったからだ。

「こだわりはない」と言いつつも、シームレスにつながったリビングと寝室や広々とした回遊性のある廊下など、4つの家にはところどころに「ただの住宅」にしないためのさり気ないアクセントが施されている。とりわけ工夫したのは、青島の家のテラスに面した4メートルのサッシだ。一見すると、通常よりも少し高いだけのサッシに見えるかもしれないが、実際に体験すれば圧倒的な開放感を味わうことができるだろう。

「いつもそんなに奇抜なことはやらないんですけど、どこかに“毒”は入れたいと思っているんです。もしかしたら誰にも気づかれないかもしれないけど、自分のなかではうまく毒が入ったかどうかを考えている。この4メートルのサッシは、ちょっとした毒になるのかなと思いますね」

「風が大好きだ」と語る大堀の手によって、4つの家はたくさんの自然光が入り、からっと風が抜けていく、どこまでも気持ちのいい空間に仕上がった。それと同時に、大堀ならではの“毒”が入ることで、NOT A HOTEL AOSHIMAには日常とは少し違った佇まいも生まれている。

「そこで時間を過ごす人が、新しい気付きや発見を得られて、その人の生活が刷新されていく。そういうものができたらいいなと思いながら、いつも設計をしてるんです」と大堀は言う。「そういう意味ではNOT A HOTELも、住む人にインスピレーションを与えるような空間であったらいいですよね。ただ家としてまったりしちゃうだけじゃなくて、ホテルとしての非日常的な側面も持っていて、それらが同居してる──そんなバランス感覚のある空間になると思っています」

MASTERPIECE

圧倒的な存在感で広々と佇む青島の家

海を最も美しく見せる緩やかな段差

「あくまでテラスがメイン。それに対して寄り添うコテージを構成するようにデザインしたんです」と大堀が語る青島の家の魅力はやはり広がるテラス。

またここでは、海の景色をもっとも美しく見せるために、テラスやリビングダイニングのフロアレベルを段々と高く調整している。「この2~3段が、プールと緩やかにつながる海の水平ラインを美しく見せています」

SURF

10秒で海に辿り着く波待ちの家

波乗りのために作られた時別な間取り

海辺のホテルは多くても、海側からそのまま部屋に入れるホテルは珍しい。「海沿いのリビングはありきたり。あえて一番海に近い場所にテラスと出入り口を設け、さまざまな過ごし方の選択肢を設けました」と、大堀は波乗りのために最適化された間取りの制作プロセスを振り返る。

GARDEN

海辺にふたつの庭を持つ海と庭の家

海を望む特等席の書斎

「最も眺めの良い場所に、あえてリビングではなく書斎を配置しています」と大堀が語る「海と庭の家」は独立した個室の書斎が印象的。書斎からは広い庭ごしに海の揺らめきを眺めることができる。

CHILL

喧騒から離れて海を眺める水平線の家

どこまでも見渡せるリビングダイニング

75平米の見晴らしのよいリビングダイニングについて、「端から端まで見通せる奥行き感をつくることは、実は最初から決めていたんです」と大堀は言う。サウナも含め、全室、海が見える構成もポイントだ。

水回りや通路に至るまで、一つひとつひとつの面積を通常より広く設けた設計もその開放感を助長する。30平米を有する広い水回りについて大堀は、「水回りが狭いと、急に住宅感が出てしまう。ここでは必要以上に広く設けた水回りによって、日常と非日常の間のバランスをうまくとっているんです」と語る。

大堀 伸 / Shin Ohori

ジェネラルデザイン代表。商業施設や戸建住宅などの建築設計から、アパレルや飲食店のインテリアデザインまで、ジャンルを固定することなく手がけている。直線的でシャープなデザインと手の痕跡が残るクラフト感の融合が特徴的。主な仕事に大磯プリンスホテルサーマルスパ S.WAVE、Saturdays NYC東京ショップ、ログロード代官山、Spring Valley Breweryなど。

STAFF

Text: Yuto Miyamoto
Photo: Tetsuo Kashiwada

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次回の配信も、是非楽しみにお待ちください。


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